悪意はガソリンの香り。

「臭い」はくさいとも読めるが、同時ににおいとも読むことができる。「くさい」という読みからもわかる通り、「臭い」という文字を使い「におい」と読ませる場合、不快感を伴うものにしか使用することができない。いいにおいに対して漢字をあてる場合、「匂い」という漢字を使う。この文字列自体でその対象がいいものであるか、不快感を感じるものであるかを表現できる。同じ読みなのに文章にしたときその文字から良いものか悪いものか伝えられるというのが興味深い。

 

最近、人工知能学会の論文において、pivixのR-18の小説を学習データとし、「卑猥な表現」を含むものをフィルタリングする方法を考える論文が掲載された。晒しあげだと炎上している。ネット上ではこの件に関して、これは作品に対して、「有害だ」「卑猥だ」とレッテルを張りまた作品の作者、URLを勝手に取り上げた無断転載だと批判が集まっている。これに対して(学術方面からか)それは無断転載ではなく正当な引用の範囲だと異論が出ていた。

 

実際にこの件に関して、論文を読んでみた。(現在は非公開になっている)直接的に卑猥な表現が含まれている文章に関しては、単語でフィルタリングをすることができる。しかし、すべて隠喩の表現だったならばどうだろうか。フィルタリングすることは困難になるだろう。これに関して、特に暗喩の表現に関しては、どの文脈で、どこで書かれたかが非常に重要である。URLごとの"卑猥な暗喩的表現"を人工知能による学習によりフィルタリングするというのがこの論文の趣旨であった。

 

実際にこの論文について読んでみた感想としては、学術的には引用は正当な範囲内であった。ネット上に公開された文章を、URL、作者名、引用した時代とともに記載している。だから、無断転載ではないという反論がでるのはわかる。でもだから、「無断転載」ではないかといわれるとそうとは限らないと僕は思う。

 

無断転載は悪いことだ。これに対する反論は僕には少ないと思う。これはネットにおける無断転載は悪いの意味を含む部分があるからである。よって、学術的な分野における引用であるからといって、ネット文化における無断転載ではないということにならない。ネットにおける無断転載という言葉は作者に無断で不快な用途に作品を使用され、それが悪いということを伝えるための言葉である。

 

今回の論文においては、R-18の小説は卑猥、有害な文章とされていた。有害はもちろんのこと、卑猥は完全な悪意を伝える文言ではないにせよ、悪い意味を含んだものであると思う。当然ながら、論文においては研究の有用性を示す必要があるため、研究において持ちいらられた文章の(青少年に与える)危険性を示す必要があるとはいえ、この論文に怒っている人はそんな悪意を感じたのではないかと思う。

 

炎上する文章には共通するなにかがあると思う。あの論文にはそれがあった。言葉の中には尊敬も卑下も宿る。それは「臭い」、「無断転載」のようにわかりやすく伝えるものとは限らない。ほんの小さな言葉遣い、言葉のチョイス、もしくは行動に対して、ちょっとづつにじみ出る。ネットにより不特定多数の、様々な文化の人々に触れる今、ほんのちょっとでもそれを含めば小さな悪意も感じ取られてしまうのだろう。

 

「無断転載」の例もわかる通り、言葉、行動のうけとり方は文化によって小さく異なる。時に、意図しない悪意が入ってしまうこともあるだろう。意図しない悪意を入れてしまわないように丁寧に行動、言葉選びをしていけないなと思っているのだけどこれがなかなか難しい。僕は元来、雑なのだ。僕が行動や、文章にそういう意図しない悪意を混ぜてしまったときは警告など出してくれないだろうか。炎上に関する研究が進み、この炎上する臭いを嗅ぎ取り警告を出してくれたらありがたいのだけど、例えば人工知能とかで。